Lilium Rubelum 〜私の心の姿〜


 外出から帰ってきた少女は、すぐに机に向かって椅子に座り、お気に入りのくまのブランケットに包まる。
 そして、いつも立てかけてある一冊のぼろぼろのノートを広げた。
 取り留めのない雑多な言葉が、乱雑に撒き散らされたページを開き、目を瞑る。少女は、自分の頭の中に潜り込む。

 少女は、自分の頭の中に、がらんどうな部屋があると喩えた。
 自分の入口も、もちろん出口もないのに、壁がなくて吹きさらしだ。
 その真ん中に、小さな引き出しがいくつかある。その小さな引き出しいっぱいに、思い出と知恵と、少しの夢が、ぎゅうぎゅうに詰まっているのだ。
 そして、少女の部屋には、無限に増え続けるたくさんの窓が、ぷかりぷかりと漂っている。
 それは、開いていたり閉まっていたり、あるいはカーテンがかかっていたりするけれど、どの窓の向こうにも、開放的で劇的な世界が広がっているのだ。
 窓を開けば、その世界の様子を見聞きして、風を感じることができる。けれども、どの窓もくぐり抜けるには小さすぎて、外へ出ることはできない。ただ、見るだけ。
 小さな引き出しに入りきらなかった思いが、床に溢れるたび、窓はひとつ、ふたつと増えていく。そして、部屋の中とは違う、様々な世界を見せる。
 少女は、窓の向こうへ行くことなく、いつもその景色を見ていた。
 窓の向こうの人々と関わることなく、いつも、ただ耳を澄ませた。
 時折、窓の向こうへ行ってみようとするものの、どうしても小さすぎて、諦める。
 そうやって、楽しさと虚しさと喜びと寂しさの間で、ずっと無数の窓とともに生きていた。

ある日少女は、一冊のノートをもらった。
それは、何の変哲もない普通のノートだったけれど、少女の頭の中の、窓の向こう側で起きたことを、書き留めることができた。
その瞬間から、真っ白でがらんどうだった少女の頭の中の部屋は、一気に色付いた。窓の向こうの出来事を、手のひらでそっとすくいあげて、一冊のノートに書き留める。
すると、ノートのページから虹が溢れ、吹きさらしの部屋をカラフルに彩った。
楽しかった。
とても、とても。
少女の頭の中の部屋は、様々な色で彩られ、花が咲き、人の声で溢れた。
少女は、笑う。
いつかの虚しい絶望など、一切なかったかのように。
これが私の生き方だ、と。

この景色が、私の心の姿。


〜Lilium Rubelum〜
たくさんの可愛らしいユリの花が咲き誇る。
私の世界を創り上げる。



←back



もしよろしければ、ぽちっとよろしくお願いします。